白石紋章店
世界に発信したい
日本の紋章の文化

お客さまの依頼で新しい家紋を創作、桃の花の家紋は日本初。伝統的な仕事にも新たな領域の仕事にも積極的に取り組む

フォーマルな和装には欠かせない
白石紋章店の白石幸男さんは紋章上絵師の仕事をしています。紋章上絵師とは染め生地に紋章を描き入れる職人で、よく目にするのは家紋の入った紋付でしょう。
日本の紋章の種類は、数千とも数万とも言われています。植物や動物などの自然から取り入れた紋章が多く、東北なら稲穂、南の方なら貝や蟹などの海産物がよく見られるなど地方ごとの特色もあります。上絵師の仕事はグラフィックデザイナーの草分けとも言えます。家ごとに伝えたい想いや願いを、発想と筆使いでシンプルな紋章に落とし込みます。
庶民も紋章を持てるのは世界中どこを探しても日本だけ。だから近年では紋章を持たない外国人から、自分の紋章を作って欲しいという依頼がよくあります。込めたい思いを聞いて、それをヒントにデザインすると感動されるそうです。「無駄を削ぎ落とした素朴なデザインの魅力を世界に発信したい」と白石さんは語ります。日本の紋章が、伝統の枠を超えひとつのデザインとして世界で注目されています。
一発勝負で
直しのきかない仕事です
紋章を手で描くのは集中力の必要な緻密な作業です。使う道具は基本的に筆です。手製の竹のコンパスに筆を付けて円を描き、筆で直線が引けるように溝の付いた定規を使います。微妙な曲線はほとんどがフリーハンドです。道具を巧みに使いこなす技に加え、染料や生地・和裁の知識も欠かせない多くの経験が必要な仕事 です。
「描き直しのできない一発勝負の仕事だから、雑音がなく集中力の高まる夜中に描きます。職人のプライドとして、直しのない仕事をしたい」と白石さんは言います。

